語るまでもない人気店というものはあります。

そういうお店だって、最初は右も左もわからない中でのオープンで、日々の積み重ねの果てに人気店という評価を得るものです。

そうおもうとかつて私が横川駅近郊に住んでいた頃、旧道にオープンした「与壱」というラーメン店。

こちら、今では安定した人気のお店となって人々に知られるところです。

ふっと行ってみたくなったので、足を運んできました。

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らーめん与壱 〜 愛されるお店とは味だけではなくて、店主の人柄も含まれる(広島市西区)

本当に昔から変わらない店構えです。

店内に広がるサイン色紙もそうですし、店主の人柄も変わりありません。

メニューこそ代わり映えはしているのですが、基本のらーめんは当然そのまま。

一味にんにくとらーめんタレがカウンターに備えてあるのも、変わりがありません。

この安心感から期待できるお店のあり方というのは、言い方を変えれば大いなるマンネリとも言えるところです。

しかし、それを貫くのは自分の味に自信があって、味だけではなくお客様に対してあるべき姿を表現する場としての店に自信があるということだと感じるのです。

そういうことをこの日、ラーメンを頂きながら感じたことがあります。

ラーメン+チャーメシ

基本のらーめんは、王道を行く広島の豚骨醤油ラーメンです。

もやしとネギ、そしてももチャーシューが添えられて、小さい丼にドンと存在感のある盛り付けは昔ながらのこの店のアプローチです。

原田製麺さんの麺もあわさって、王道の王道たる一杯をきちんと表現されています。

サイドメニューとしてお願いをしたチャーメシ。

提供前にマヨネーズを載せるかどうかを確認してもらうところもまた昔と変わりません。

こうやっていただくと、かつて私の生活圏として過ごしていた10年くらい前の暮らしを思い出しつつ、今の暮らしと自分のあり方をふっとノスタルジックに思い出させてくれるところでもあります。

味の刷り込みからくる記憶の振り返りもまた、ときにぐっと胸をしめつけるもの。

つまり、味の記憶というのはシチュエーションも含めて身体に刻まれるものです。

店主の心づかいも味のうち

私がお伺いしたのは、閉店間際の時間帯でした。

私のオーダーがその日の最後の一杯になるところだったのでしょう、私のらーめんが提供された直後にアルバイトの方がのれんを下げられました。

程なくして店の前には2台の自転車が。

店内の様子をうかがっている2台の自転車に乗ったふたりを見つけた店主は、アルバイトの方にこう伝えます。

「らーめんのご用意ができるから、訊いてきて」と。

ふだんだと、のれんをさげるとゆで麺機の火を消して後片付けをはじめるものです。

しかし、店主はこう言葉をかけた後にふたたびボイル機に火を入れていました。

自転車の2人は恐縮しながら入店して、らーめんをオーダーしています。

それになにごともなかったかのように返答をして、らーめんをつくりはじめる店主。

お客様のことを思って仕事をするには、押しつけの親切というのはいらないんですよね。

はたでそれを感じながら、らーめんをいただきました。

自然な振る舞いが、そこにある安心感

何気ないシーンかもしれないし、私がたまたま見かけただけのことかもしれません。

でも、そういう気づかいや心配りができる余裕というのは、長年の経営をしてきた人だけが醸し出すことのできるあり方なのではないのかな、と感じるのです。

たかが一杯のラーメンでも、その人にとっては強い思い入れになるものかもしれない。

それを感じた、数年ぶりの「与壱」さん訪問でした。

ごちそうさまでした!