知りませんでした。
いや、そういうタイトルの作品があることは知っていました。
知らなかったのはその作者が広島のご出身、そしていまは広島に拠点を置かれている漫画家さんであるということを。
タイトルだけ知っていて、作品の中身も知らず。
あるきっかけで深く知ってしまい、いてもたってもいられなくなったので作品を一気読みしてきました。
『ワカコ酒(1〜7巻)』新久千映
キャラと料理のギャップ
村崎ワカコ、26歳。
このかわいいキャラが、ひとり酒を楽しむために夜な夜な店を渡り歩く。
キャラクターはさらっと描かれていて、ものすごく日常性がある雰囲気を感じてしまう。
しかし、お店や料理のデッサンは、キャラクターとは違って精巧に描き込まれています。
このギャップ、これこそが『ワカコ酒』でワカコが際立つもっとも大きな要因ですよね。
登場する料理にしてもお酒にしても、「○○産のナントカ」とか「○○というブランドの日本酒」などとディテールはほとんどなし。
単に飲み方だけが書かれたお酒の種類だけにとどまっています。
そして料理に至っては、ポテトサラダやおうち餃子のような家庭的なものから、うにクレソンやホルモン天ぷらといったご当地グルメを扱うまでのレンジの広さがあります。
これはあそこだ
お店や料理のデッサンが精巧なことで、取材力とその再現性の高さがものすごく伝わってきます。
作者の新久千映さんが広島で活動されている、つまり取材先に広島のお店も多く含まれていて、読みながら「これはあそこだ!」という脳内再生が頻繁に起こります。
コミックス累計100万部を越える作品で、ワカコの追体験をできるというのはなかなかにしてぜいたくな気持ちにさせてもらえます。
中ちゃんのうにクレソン。
新京本店の目玉焼き。
広島駅弁当の夫婦あなごめし。
そして、お散歩のシーンで描かれた比治山公園。
『ワカコ酒』ではお店の特定はされないのですが、こういう「あ、ここ知っている!」というヒミツのシェアみたいな感覚がたまりませんよね。
ひとり飲みをしたくなった
外で食事をするときに「ひとり飲みで軽くしっぽりと」という選択肢が今までなかった私。
それなりに広島の御食事処を知ってはいるものの、その楽しみ方、お店への敬意の表しかたを身に着けていなかったなあ、と再認識しました。
おいしいお酒と、そのお店で振る舞われる料理を少しずつでも楽しんで、地域のお役にたつというのもいいよねえ、と感じるのです。
とはいえ、『ワカコ酒』6巻には、ワカコの上司にあたる岡田主任の「家庭を持つもの」についてのモノローグがあったりと、それはそれで思うところはありますがね。
なにはともあれ、いつか新久千映さんとご一緒してお酒と料理を楽しんでみたいものです。
・・・あ、新久さんの作品で広島を題材にしたグルメ本があるから、それで読書会を開こっかな。