「依存する人」を脱却せよ。
1.本の紹介
コーチングだけでは歯が立たない問題社員を抱え、さまざまな個性のメンバーが混在するチームを成長させる実践手法を紹介しています。
「依存者」「自称勝者」をチームに貢献する人間へと育てるにはどうしたらいいでしょうか。
2.本の要約、3つのポイント
1)コミュニケーションの失敗がもたらすものとは
ビジネスにおけるチームワークの構築には、プロセスがあります。
これは省略できるものでもなく、段階を経ていくもので、それができあがるには時間がかかります。
それを端折ってしまったり、十分なコミュニケーションを築けないままの関係性でいてしまうとそこには「感情のしこり」ができてきます。
この「感情のしこり」が生まれてしまうと、人を選んで仕事をしてしまったり、トラブルが起きたときでも主に人間関係を鑑みた利害関係によって動く人間になってしまうことがあります。
2)職務遂行能力と精神的成熟度のマトリックス
仕事の成果を高く上げることができる、いわゆる「職務遂行能力」の高い人も、チームワークを乱すような「精神的成熟度」の低い人であればチームの総和としては機能しないことがあります。
逆もまた然り。
著者はこれをマトリックス化して5つのステージとしています。
つまり、「職務遂行能力」と「精神的成熟度」は別のものであると考えています。
人の成長プロセスは、つねに右上がりに増え続けるグラフではなく、その時のステージによって得るものが違うことによる階段型成長を伴います。
これらを踏まえて、部下はいまどのステージにいるのか、次はどのステージにあるべきかを見据えていくことがリーダーの要件となってきます。
3)ティーチングとコーチングの機能
最近でこそ頻繁に耳にするようになったコーチング。
コーチングは中・長期の視点に基づいた長所伸展の指導を行い、自発的な行動を促していきます。一方で個別対応を求められるために時間がかかり、コーチにはその対応能力が求められます。
一方でティーチングは、短期視点に基づいた指導方法で、短時間で画一的な指導をおこなうことができます。
一方でその成果においては指示命令の範囲を越えたものになることはほぼありません。
そのなかで「職務遂行能力」と「精神的成熟度」のマトリックスにおけるいずれも低いスキルの人に対して、コーチングというのは機能しないことがあります。
むしろ、逆効果を招く恐れもあります。
そのときには厳しく接し、必要に応じては叱ることも求められます。
上司として忘れてはいけないのは、部下の成長を願って接するということです。
3.本から学ぶ、3つのキーワード
1)「依存者」
問題は自分以外にあると考える人たちで、マトリックスのなかではもっとも低いステージに位置する人たちです。
いつも被害者意識を抱えていて、自己認識が低いために自分を変えることができない人です。
2)「不順な動機は長続き」
「依存者」から主体的に行動する人に変化する過程では、さまざまなモチベーションでものごとを推進させていくことになります。
たとえば「出世したい」「お金がほしい」「異性にモテたい」といったパッと見は不純と思われそうなものでも、行動が継続するのならばそれはよしとします。
3)「サイレントコントロール」
自分の地位や名誉を後ろ盾に部下たちと威圧的に接することをこのように呼びます。
人を萎縮させ、個々の能力をつぶして指示待ち体質が定着し、人の可能性を潰す行為です。
ひいては組織の活性化を阻害して、弱体化させてしまいます。
4.本から実践、ひとつの行動
『メンバーの仕事や役割に目的を与える』
仕事の指示命令も、ただそれだけを伝えるのではなく、それにどのような目的があってどこにゴールがあるのかを明示していきます。
5.ご紹介した本の情報
6.スギコラム(読後感想)
今でも継続してコーチングと心理カウンセリングの勉強をしていますが、ときにしてそれは相手を甘やかしてしまうことになるのではないかと思うことがあります。
たとえば、短期的な命題がはっきりしているにも関わらず、その人の自主性に期待をするあまりに結果が遅くなるということを繰り返してしまうのは、コーチでありリーダーの責任です。
つねに結果がすべてのビジネスの世界において、コーチングとティーチングのつかいわけをシームレスにできるように研鑽していきます。
ゴールのない仕事ほど、手がけていて不安になることはありません。
プロセスを重視しながら、設定したゴールを手にするためにもハッキリさせるところはハッキリさせましょう。