ずっと不思議に思っていたんです。
アンパンマンとばいきんまんって、いつも戦っていますよね。
愛と勇気が友達のアンパンマンは、どうしていつもばいきんまんと戦うんだろう。
なんで戦うんだろう。
やなせさんは、アンパンマンを通じて何を伝えたかったのだろう。
それを思って、この本を手にしました。
『ぼくは戦争は大きらい』
この本は、やなせたかしさんが亡くなる数カ月前に対談で収録された戦時中の回顧録をまとめた内容になっています。
テレビや映画で映しだされる戦争の陰惨さとは少し趣の違う、しかしそれはやなせさんのやさしさというフィルターにかかっているのかもしれない戦争情景が、とつとつと語られる言葉として綴られています。
語り部としてのやなせさんからは、戦死した弟さんのことも話題に出てきます。
「アンパンマンのマーチ」は、弟さんに向けて作詞されたものだという解釈をされることに対してのやなせさんの言及もありました。
弟さんは、目が悪かったために飛行機には乗れませんでした。
学力で克服して海軍中尉となりますが、その船上で撃沈されて戦死したとのこと。
弟さんの戦死は戦後しばらくたってから聞かされたやなせさんの、弟さんを思う気持ちが自然と歌詞になったのでしょう。
そして、私が冒頭に書いたこと。
アンパンマンはなぜたたかうのか。
それは、アンパンマンは食べもので、ばいきんまんはばいきんだから。
仲良くしてもらっては困るから戦うのだそう。
アンパンマンは、その顔を分け与えます。
それは、分け与えることで飢えは無くせるということと、嫌な相手とでも一緒に暮らすことができるということ、これを伝えたかったのだそうです。
戦時体験がうんだアンパンマンのメッセージは、単なる反戦というくくりではなくやなせさんの思いが多分に含まれたキャラクターといえるでしょう。