スギ(@sugi_pallat)です。
RCCラジオ「おひるーな」を聴いていたら、きょうから木曜日のヒルニストとして田村陽至さんのお名前が飛び込んできました。
この方、パン屋さんの常識をくつがえすようなビジネスモデルをお持ちの方なんですよね。
おひるーなの新ヒルニストはパン職人!田村陽至さんの働き方とパンの非常識に学ぶ。
広島市中区八丁堀に、週末だけオープンするというパン屋さんがあるんですね。
そのお店は「ブーランジェリー・ドリアン」という名前で、このお店のオーナーがヒルニストとしてラジオに登場される田村さん。
Googleローカルガイドの口コミでも4.1ポイント(2018年4月5日時点)の評価を得ていらっしゃるお店です。
そんなお店のことをなんで知っているのかといえば、「捨てないパン屋」として取り上げられていたことがあったからなんですよね。
『捨てないパン屋』というワードで検索すると、田村さんのブログをはじめとして各メディアに取り上げられた記事を読むことができるので、そこから考察してみます。
もったいないが発想転換の原点
田村さんはもともと、祖父の代からのパン屋稼業を引き継がれてきた3代目でいらっしゃいます。
まちのパン屋さんといえば、深夜のうちから作業をはじめて、数多くの種類を準備して焼き上げて、それをお店に並べて販売して、という超局地的な労働集約型産業の典型ともいえますよね。
お客にしてみれば、店内いっぱいに広がるさまざまな種類のパンを目移りしながら選べることに優越感がありながらも、実際にはパン職人であったりお店の方にしてみれば、文字通り身を粉にして働くことでしか成り立たないビジネスです。
そんななかで売れ残れば廃棄せざるを得ないわけで、そうやって自らがつくりだしたものを捨てていくことへの憤りも感じていらっしゃいました。
働き方、売り方、つくり方の変化が「捨てないパン屋」となった
お店を休業して海外で修行を積まれていくなかで、「手抜きをしている職人」に出会うことになります。
それは、これまでのパン製造の常識をすべて打ち崩して、とことんシンプルにした作業手順にしてしまうこと。
しかしその一方で、小麦粉は最上級のものを手にするということを知ることとなって、実際に国産の有機小麦をつかったパンづくりをはじめられた結果が、今の「ドリアン」になっているんですね。
週に3日だけパンを焼き、工場併設でセルフのお店を開店し、ECサイトでは定期購入コースを運用されるなど、これだけでも従来のパン屋さんスタイルとはかけ離れたものになっています。
お客に選ばれ、お客を選ぶビジネス
お客にしてみれば「パンは毎日でも食べたいものだから、毎日いろんなものを選んで楽しみたい」とか「焼き立てパンがおいしいよね」というニーズは、まだまだ多数派の意見でしょう。
一方では、こだわった小麦粉で焼かれたパンが数日たっても傷まずに食べられるのならばそれでもいい(むしろその方を選ぶ)という層だって一定数あるわけです。
少量多品種の品揃えを誇る人気店も、実は焼き立てパンを提供し続けるためにスタッフをたくさん雇い、パンに情熱をささげていらっしゃる方も少なくないかも知れません。
お店や工場を持つには、家賃や修繕費もかかればスタッフの人件費も必要になるし、なにより規模が大きくなれば目の届きにくいところだってあるわけです。
しかし、結果としてでもちいさなビジネスでも自分たちの暮らしがきちんと担保されて、支えてくださる方が多くいらっしゃるというのは、経営をするうえではなによりの喜びなんですよね。
お客に選んでいただけて、取引先の方にもよろこんでもらえて、そして自分たちの暮らしが望んでいる水準のものになっているということ。
田村さん自身が10年前から「捨てないパン屋」になろうと願っていらっしゃったことが、今こうやって実を結んで、さらにはレギュラーでラジオコメンテーターとしてのポジションを築かれるようになったのも、働き方と売り方、つくり方を見直したパン屋のありかたがもたらした大きな結果ですよね。
きょうの「おひるーな」で田村さんは、ここまでのご自身の結果を「運の人」だとおっしゃっていました。
いやいや運だって願っていなければ実現しないですからね。
田村さんのこの考え方が、食の未来と食に携わる仕事をなされている方の多くに少しでも届けばいいなあ、と思うのでした。
明日あたり、パンを買いに行ってみようかな。